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印刷の色の世界

  • miyuki tsurumi
  • 3月21日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月15日


見本帳

皆さんは印刷の色について注目した事はありますか?


私は印刷業界に入った当初、普段なにげなく手に取っている本の表紙や文房具、お菓子や化粧品の箱などが「どのくらいの色数を使用しているか分かる?」と聞かれ、その答えにとても驚きました。手元にあった本の表紙を見て、すごくカラフルなデザインだったので120色の色鉛筆みたいな感覚で沢山の色を使ってるのかなと思っていたら、なんと基本的にはたった4色だったのです!


マイクロスコープ

最初は「え?」と思い、半信半疑だったのですが、印刷業界の方々が使用する道具に「ポケットマイクロスコープ」というものがあります。一般的には「ルーペ」や「ペンルーペ」と呼ばれており、印刷業界では印刷品質の確認に使用されます。拡大鏡の一種で、倍率は用途によって異なりますが、一般的には25倍程度のルーペが推奨されることが多いです。


マイクロスコープ使用例

そのルーペで印刷物をのぞいてみると・・・無数の点が重なり合っているのが見えます!

しかし、元の点の色は基本的な印刷物では4色で構成されている事がほとんどです。それらの点を「網点(あみてん)」と呼びます。ルーペは特に網点の形状や密度、スクリーン角度などを確認したり、色の均一性や印刷におけるエラー(ドット抜けや滲みなど)をチェックします。


網点(あみてん)

網点をもう少し詳しく説明すると、印刷物の画像や色を再現するために使用される小さな点の集合体です。


目に見えないほど細かい点が、一定のパターンで多数配置されています。特に色調や濃淡を表現する際に使われます。


濃い部分では、大きな点が密集して配置され、明るい部分では、小さな点が間隔を空けて配置されます。 人間の目はこれらの点を個別には認識せず、全体として滑らかな色や濃淡を感じます。


印刷技術では、通常1つのインクの色で異なる濃淡や中間色を表現することはできません。そのため、インクの濃淡を物理的に再現する代わりに、網点の大きさや密度を変えることで視覚的な効果を得ています。


あみてん

基本的な4色について簡単に説明します。


印刷で使用される色の基本は「CMYK」と呼ばれる色モデルです。Cはシアン(青)、Mはマゼンタ(赤紫)Yはイエロー(黄)Kはブラック(黒)を指します。この4色のインクを混合することで、多彩な色を再現できます


人間の目が捉える色は、光が物体に反射して目に届いた結果です。一方、印刷物における色は、光を吸収して反射する特性を利用するため、「減法混色」と呼ばれます。各インクが異なる波長の光を吸収し、残りの光が反射して色を見せます。光と印刷インクが織り成すプロセスが、印刷物の美しい色彩を可能にしています。


CMYK

CMYKの特徴


  • 印刷物(ポスター、パンフレット、名刺、書籍など)で使用され、物理的なインクを重ねるプロセスに適しています。

  • 色域が狭く、RGBで表現できる全ての色を再現することはできません。

  • 特に鮮やかな蛍光色や輝きのある色は表現が困難です。


◇RGBとの違い◇

デジタル画面(モニター、スマホ、テレビ)で使われるRGBは、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの光の色を組み合わせて色を表現します。光を直接発するデバイスで用いられ、「加法混色」と呼ばれる仕組みです。すべての色を最大値(255)で加えると白になります。


RGB特徴

  • CMYKよりも広い色域を持つため、明るく鮮やかな色を表現できます。

  • スクリーン上のコンテンツ(ウェブデザイン、動画、ゲーム、デジタル広告)などデジタルメディアではRGBが標準的に採用されています。

  • 光を発するディスプレイ環境で効果的です。


注意点としては、CMYKとRGBは異なる原理に基づいているため、1つのカラーシステムから他方へ変換する際に色が変わってしまう可能性があります。


例えば、 RGBで鮮やかな色に設定したデザインが、CMYKで印刷するとくすんで見えることがあります。(対策としてはカラーマネジメントシステムを使用して、色の変換をできるだけ正確に行うことが推奨されます。)

 

CMYKを使用して印刷する事を「4色印刷」といい、印刷物の基本になります。対して、微妙なニュアンスや色にこだわりたい時は「特色印刷」という手法もあります。それぞれメリット・デメリットを理解した上で、印刷物の用途によって使い分けると便利です。


RGPとCMYK

◆4色印刷

〈メリット〉
  • 4色だけでフルカラーを再現できるため、費用を抑えられます。・商業印刷や大量印刷に適しており、汎用性が高いです。・多くの色を再現可能で写真やカラフルなデザインを忠実に再現できます。

  • 印刷業界で世界的に標準化されており、印刷機の設定や運用が効率的に行えます。

  • 紙だけでなく、プラスチックや布などさまざまな素材への印刷も可能です。


〈デメリット〉
  • 4色では表現できない色(例えば蛍光色や金銀などのメタリックカラー)が存在します。

  • 特殊な色(スポットカラー)を使いたい場合には「特色」などの追加のインクが必要です。

  • 微妙な色合いや高精度な印刷が求められる場合、品質の限界がある事も考えられます。


◆特色印刷

特色印刷とは、特定の色(スポットカラー)を個別に調合したインクを使用する印刷技術です。CMYKでは表現できない特別な色や効果を求める場合に使われます。また、ブランドカラーの管理や広告で一貫した色を使用するために指定される事も多いです。デザインの統一感を保ったり、特定の色を正確に再現するために使用されます。

 

【手順として】

色を選定する パントーンやDICなどの色見本帳があるので、それらを使用して、希望する色を選びます。各色には固有の番号(例: Pantone 123 C)が割り振られており、この番号を指定することで、正確な色を共有できます。


色見本帳は、紙の種類(コート紙、アンコート紙など)ごとに異なるバージョンがあるため、使用する素材に応じた見本帳を選ぶことが重要です。


また、Adobe IllustratorやPhotoshopなどのデザインソフトでは、パントーンカラーを直接選択できます。これにより、デジタルデザインと印刷物の色の一致を図ることができます。(※ただし前述の通り、デジタル画面(RGB)と印刷物(CMYKまたは特色)では色の表現方法が異なるため、実際の印刷物の色を確認するために色校正を行うことが重要です。)


印刷会社への指示印刷を依頼 使用したい色見本帳の番号を指定します。色見本帳はチップと呼ばれる小さく切り離して使える仕様になっており、それを印刷会社に支給します。これにより、印刷会社は指定された色を正確に再現するためのインクを調合します。

 

〈特色印刷のメリット〉


  • 特色印刷では、特別に調合されたインクを使用するため、特定のブランドカラーや指定された色を正確に再現できます。

  • パントーン(Pantone)などの色見本を基にした色が安定して印刷できる。

  • メタリックカラー(ゴールドやシルバー)、蛍光色、または特定のパステルカラーなど、CMYKでは再現が難しい色が豊かに表現できます。高級感や個性を演出するデザインに最適です。

  • 光沢やマット加工、透明感のあるインクなど、素材や仕上げ効果に応じた特別な効果が実現できる印刷が可能です。特に豪華なパッケージや限定版の製品で多用されています。

  • 大量印刷でも色ブレが少なく、再現性が高いのが特徴です。特に高い品質が要求されるブランドロゴや重要なプロジェクトに最適です。


〈特色印刷のデメリット〉 


  • 特色インクを特別に調合して使用するため、CMYK印刷に比べてコストが割高になる場合があります。少量印刷では特にコスト効率が低くなる傾向があります。

  • 特色インクを使用した場合、1色につき1つの印刷版が必要なため、色の変更や追加が難しく、柔軟性が低いのでデザインの修正が手間になります。オンデマンド印刷や少量多品種の印刷には不向きです。・1つの印刷工程で使える特色インクの数には限りがあるため、多くの色を使いたい場合には向いていません。

 

代表的な色見本帳にパントーン(Pantone)DIC(大日本インキ化学工業株式会社)があります。


◆パントーン(Pantone)の特徴


パントーン(Pantone)

アメリカのPantone社が開発した色見本帳で、国際的な標準として広く利用されています。


海外の印刷会社やデザイナーと連携する場合は、パントーンが適しています。

色の種類:パントーンカラーシステムには数千種類の色があり、豊富なカラーバリエーションを提供しています。特に蛍光色やメタリックカラーなど、特殊な色も多く含まれています。


用途: ファッション、インテリアデザイン、プロダクトデザイン、広告など、幅広い分野で使用されています。また、デジタルデザインソフト(Adobe IllustratorやPhotoshopなど)との互換性が高いです。


特色インク: パントーンカラーは特色インクを使用しており、特定の色を正確に再現することが可能です。ただし、印刷コストが高くなる場合があります。


価格:海外製のため、色見本帳の購入はかなり高価です。


◆DICの特徴

ディック(DIC)

日本のDIC株式会社が提供する色見本帳で、日本国内の印刷業界で広く利用されています。


国内の印刷会社とのコミュニケーションがスムーズに行えます。

色の種類: DICカラーシステムは、パントーンに比べて色数が少ないですが、日本の印刷業界に特化した色が多く含まれています。特に和色や伝統的な色が豊富です。


用途: 主に印刷物やパッケージデザインで使用されます。日本国内のプロジェクトやブランドに適しています。


価格: DICカラーはCMYKプロセス印刷との相性が良く、比較的コストを抑えた印刷が可能です。色見本帳もパントーンに比べて安価です。

 

色見本帳を見ていると、とてもカラフルでこんなにも色の種類があるのかとワクワクします!また、ちょっとした知識が深まると、普段なにげなく見ている光景が一気にカラフルに見えて色んな発見があったりもします。


「印刷の色の世界」を一度のぞいてみてはいかがでしょうか。





お気軽にご相談ください


印刷に関するご相談は、大阪市鶴見区の印刷会社「株式会社美有起(みゆき)」へお気軽にご相談ください。オンデマンド印刷を得意とし、パッケージ、台紙、POP、紙袋、ラベルなど、幅広い印刷物に対応しています。






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