オンデマンド印刷から後加工時の注意点と工夫
- miyuki tsurumi
- 6月30日
- 読了時間: 6分

普段の何気ない生活でふと目にする私たちの身近にある質感やデザインが豊富な印刷物。 世の中にはありとあらゆる素材の紙が存在しており、企業が伝えたいイメージや魅力を引き出すアイテムとなっています。またシールなども小さな子供やコラージュをする時に欠かせなかったり勉強にも役立ったりします。
では、そんな印刷物の加工の裏側がどのようなことをして作られているか皆さんは意識してみたことはあるでしょうか?
美有起では印刷から加工、そして発送まで一貫して行っていますが、その工程の中で用紙の素材によっては印刷や加工時に注意をしなければならない紙やタック紙(裏面に接着剤が塗布されている物)があり、それらは同じ条件で加工できるとは限らないのです。
ここでは、そんな印刷から加工までの工程の中で意識している注意点や加工がスムーズにいくために工夫していることにはどんなことをしているのかを覗いてみましょう。
印刷について
まず初めに印刷についてです。美有起ではオンデマンド印刷機を導入しており、紙系ではお菓子のパッケージから取扱説明書、メモ帳、チラシ、名刺、ポストカード、商品POPなどなど・・・。あげだしたらキリがないですがかなりの種類をやってきました。
またタック紙に関しても、シール商品から店頭の窓に貼られているステッカー、ラベルなど、皆さんの生活の中で絶対に目にしたことがある数々の商品も印刷しています。
そもそもオンデマンド印刷とはどのような仕組みで印刷が出来ているのかを簡単に説明いたします。 トレイに紙をセットし印刷を開始すると、紙が機械の中を走行しトナーと呼ばれる粉末状の物質を静電気で紙に転写(書き出し)後、熱で定着して印刷物が出てきます。
静電気って意外と厄介な存在
このオンデマンド印刷機の特徴でもある切っても切り離せない静電気。実は私たちの現場作業において様々な問題を引き起こす原因ともなっています。紙系の商品で使われるいわゆる「普通紙」と呼ばれる物に関しては静電気はそこまで影響はないのですが、これがシール素材に用いられる「タック紙」ともなると話が180度変わってきます。

タック紙は普通紙と比べかなり静電気が帯びやすく、用紙と用紙が擦れ合うだけで発生するためオンデマンド印刷の静電気を利用した転写をするとそれはもう大変なことになります!!
静電気がかなり帯びてしまったタック紙は用紙同士が引っ付くのはもちろん、印刷機の排出部分にも引っ付いて滑りが悪くなり紙詰まりや用紙が折れてしまったりして不良品が出てしまう原因にもなります。
ですが美有起で導入しているオンデマンド印刷機は静電気を取り除いてくれる「徐電機能」をオプションで搭載しているため機械の中で除電も一緒に行い印刷ができるのです!除電機能のおかけでその後の加工においても作業がかなりしやすくなり生産性の向上につながっています。
ただ、季節や湿度、タック紙の種類によってもそれぞれ異なるため除電の強さを調整する必要はでてきます。

定着時の熱による紙の反りに対する工夫
オンデマンド印刷をする時にトナーを紙に転写した後、熱で定着をしているとお伝えしました。その熱はかなりの高温のためそこを通った用紙によっては少なからずダメージを受けています。 普通紙では用紙がそもそも丈夫なものが多く反ることはあまりないですが、ここでもタック紙の方が一番影響しやすいです。
タック紙というのは上から「表面素材」「粘着剤」「剥離紙」の 3 層で構成されており、そのうちの「表面素材」が熱により縮んでしまいセパレーターと呼ばれる「剥離紙」が引っ張られ上反りしてしまうのです。中でもトレーシングや和紙素材のファンシーテープ、和紙きりというタック紙は上反りが激しく後加工もやりにくくなります。

「じゃあ熱を下げて印刷すればいいじゃん!」と思うかもしれません。が、そうすると今度は定着が甘くなり少し爪で擦っただけですぐにトナーがはがれてしまったり、デザインが少しガサついたような状態になってしまいます。

綺麗に印刷をするともなればある程度の温度が必要ですが、それに比例して紙が上反りしてしまうのです。

美有起では印刷した後に別機械のDCカッターという抜き機でハーフカットの加工もしております。 そのDCカッターで加工する時に上反りが妨げとなり、綺麗にハーフカットができなかったり、自動給紙の機械なため変な入り方をして紙がつまったりと良品作りがかなり困難になってしまいます。
そんな上反りをしてしまったタック紙は自然には真っ直ぐに戻ってくれないので、加工前に少し一手間加えなければなりません。その対策法は「水平な面に置き、上からタック紙全体に圧力をかけること」です。

これにより上反りがある程度改善しDCカッターでの加工も格段にしやすくなります。ただ、ある程度なため完全には真っ直ぐにはなりませんがやるとやらないのとでは大違いです!このやり方により上反りしやすいタック紙の扱いも難なくできます。
印刷から断裁をするときの注意点
DC カッターのほかに断裁機を使って断裁も行っています。印刷をした後に「トンボ」と呼ばれる仕上がりサイズや断裁位置を示す目印に合わせて断裁をしますが、ここでも印刷時に注意が必要なのはトンボが真っ直ぐ入っているかどうかです。
「え、真っ直ぐ印刷できるもんじゃないの!?」と思うかもしれません。が、何も考えずに印刷をすると実は少し斜めになった状態で印刷してしまうことがあるのです。

用紙の状態によって機械内部の走行時にどうしても1mm以上のズレが発生することがありこれはどの印刷業界でも起こり得ることです。「たった1mmなんて大したことないんじゃない?」と言いたいところですが、デザインによっては1mmのズレでも商品の仕上がりを見た時に違和感を覚えたりしてしまうこともあります。
断裁機は基本的に真っ直ぐに断裁ができるよう設計されています。そのため印刷が斜めになっていると断裁では直すことがかなり難しいのです。なので印刷の時に画像の位置を調整する必要があり、これをアライメント調整といい自動と手動の2種類があります。

自動アライメント補正とは、インラインセンサーによって自動で読み取り、ズレの補正をしてくれます。手動アライメント補正とは、用紙に印刷されたトンボなどを目印にズレ量を計測しズレに応じて縦・横・斜めの位置を調整します。主に手動で位置の調整をすることが多く、大量に印刷する前には必ず1枚だけ試しに印刷してズレがないかの確認を行います。
この作業により断裁をした時も斜めにならず綺麗な仕上がりになるのです。
より良い品質作りのために
今回は身の回りの印刷物が出来上がるまでの裏側ではどのようなことをしているかをいくつかご紹介しました。 中には一筋縄ではいかず我々の頭を悩ませていることもあったりしますが、どんなことにも柔軟に対応し工夫を凝らしていくことで様々な要望にもお応えしてまいります。