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見栄えも保存も!野菜の包装資材の進化

  • miyuki tsurumi
  • 10月20日
  • 読了時間: 7分
野菜のイラスト

スーパーや八百屋さんで売られている野菜の包装資材について、よーく見てみると野菜の個性に合わせて様々な資材が使用されています。実は野菜ごとに最適な包装方法があるんです!今回はその種類や目的について、ご紹介します。


野菜の包装資材の目的について、大きく分けると次の3つです。


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①鮮度保持

②流通/保管効率の向上

③売場での見栄えアップ

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①鮮度保持


野菜は収穫後も呼吸を続けるため、収穫から消費者の手に届くまでに鮮度をいかに維持するかが大事です。野菜の呼吸によって生じる湿気や熱を吸湿性のあるシートや調湿フィルム、抗菌性を備えた包装材の使用によってコントロールし、カビの発生や変色を防いだり、収穫後の乾燥や傷みを防ぐ緩衝材入りの包装は、デリケートな葉物野菜の品質保持にも効果的です。


②流通/保管効率の向上


バーコードやQRコードを印字した包装は、産地情報や栄養成分を表示することでトレーサビリティの向上や在庫管理にも役立ちます。また、包装機の導入で自動化する事で人件費削減と効率化を促進しています。最近ではフードテックとの融合し、AIやIoTを活用した包装技術の進化も見られます。


③売場での見栄えアップ


デザイン性の向上する事で購買意欲を高めるパッケージ戦略が重要です。サイズの合ったOPP袋にデザイン性や訴求力の高い印刷を施し、農家や販売者が自社ロゴや産地情報を印刷することで、差別化やブランド力向上にも活用できます。


では次に、実際にどのような包装資材の種類があるのか見てみましょう!




防曇袋(ぼうどんぶくろ)


野菜や果物の鮮度を保ち、見た目の美しさを維持するために袋の内側に水滴がついて曇るのを防ぐ加工が施された袋で、主に青果物の包装に使われます。


野菜は収穫後も呼吸をして水分を発するため、通常の袋では内側が曇ってしまい、見た目が悪くなったり、鮮度が落ちたりします。防曇剤が塗布、または練りこみされることで袋内に湿気がこもりにくく、曇りにくい性質があるため、鮮度を保ちつつ商品の見映えも良好に保つ事が出来ます。


OPP素材は透明度が高く、強度もある「二軸延伸ポリプロピレン(OPP)」がよく使われます。サイズや厚み、穴の数を調整することで、野菜の種類や出荷環境に適した仕様にカスタマイズできます。軽量で安価、水分に強く、特に大量出荷向けの業務用パッケージとして高い需要があり、コストパフォーマンスにも優れています。三角袋、ガゼット袋、スタンドバッグなど、野菜の形状や用途に応じた多様なタイプがあります。


注意点としては、低温環境では強度が低下:冷蔵・冷凍には不向きな場合があるため、使用環境に注意が必要です。また、サイズ選びが重要で、野菜の形状に合ったサイズでないと、袋が破れたり、見栄えが悪くなることもあります。


OPPフィルム/ピロー包装


OPP(Oriented Polypropylene)フィルムは、ポリプロピレンを二軸延伸して作られた透明性・強度・防湿性に優れたフィルムです。ピロー包装の素材としてよく使われます。透明度が高く中身がよく見えるため、青果物を見栄え良く商品価値を高めます。また、通気性や防湿性に優れており、乾燥や酸化を防止したり、強度が高いため、破れにくく、輸送にも安心です。印刷適性が良く、ブランドロゴや商品情報の印刷が鮮明に出来る事もポイントです。


ピロー包装(Pillow Packaging)とは、フィルムを筒状に巻いて、上下と背面をシールすることで密封する事で、横から見ると袋の形状が「枕(ピロー)」のようにふっくらしていることから名付けられた包装方法です。主に自動包装機で行われ、主に葉物野菜などに使用されています。高速・大量処理が可能で、自動化に適しており、省人化・効率化が可能。空気を含ませてふっくら包装できるため、中身の保護性が高く、印刷やラベル貼りも容易で、販促効果も高い事が特徴です。


粘着テープ


粘着テープは単なる固定具ではなく、作業効率・鮮度保持・見栄えに大きく貢献しています。ねぎ・ほうれん草・小松菜など、束ね野菜の結束に使用され、自動結束機で高速処理が可能です。


テープは主に以下の2種類があります。


・OPP粘着テープ

透明で強度が高く、コストも安い。袋の口止めや簡易包装する際に用いられます。手作業でも簡単に貼れるため、小規模農家でも導入しやすい事が特徴です。


・紙粘着テープ

手でちぎれ、印刷しやすい環境配慮型のテープで束ね野菜(ねぎ・ほうれん草など)に使用されています。紙テープに産地名やロゴを印刷することで、販促効果も期待出来ます。


粘着テープにバーコードやQRコードを印刷して、トレーサビリティ対応する事が出来、商品名・価格・保存方法などの情報を記載することも可能です。最近では、植物由来素材で出来たバイオマス紙テープを使用する事で環境負荷を軽減したり、再剥離タイプでリサイクルしやすく、分別も簡単に出来るものやカラフルでPOP機能を兼ねた印刷入りテープにする事で売り場映えを狙う事例も増加しています。


プラスチックパック・トレー


主にミニトマトやカット野菜などに使用されています。透明性が高く、見栄えも良好。中身をすぐに確認出来るため、異物混入や乾燥を防ぎつつ、持ち運びにも便利です。


最近ではリサイクルPETや紙製パックなどを使用し、脱プラの流れに対応しているものもあります。


ガス置換包装(MAP)

MAP(Modified Atmosphere Packaging)は包装内の空気を特定ガスに置き換えることで、酸化や微生物の繁殖を抑え、食品の鮮度保持や保存期間の延長する包装技術です。真空包装とは異なり、空気の容量を保ったまま酸素濃度を下げることができるため、見た目や形状を損なわずに鮮度を保てます。SDGsの観点からも注目されている包装方法です。


ネット


ネット包装は、玉ねぎやじゃがいもなど、比較的強度のある野菜に適しています。通気性が非常に高く、水分や熱がこもりにくいため、長時間の輸送や保存にも対応しやすいのが特長です。持ち手の付いたネットや、タグラベル付きタイプもあり、輸送性と陳列性を兼ね備えています。また、近年では環境負荷を軽減したバイオマス素材のネットも登場し、持続可能な選択肢として注目を集めています。


また、令和以降は環境に配慮した包装資材にも注目が集まっています。SDGsやカーボンニュートラルへの移行、環境意識の向上などがあり、簡易包装や脱プラスチック、再利用可能素材の導入といった、環境負荷を軽減する包装資材のニーズが高まっています。


①バイオマス素材の活用

植物由来の原料(バイオPE・バイオPETなど)を使った袋やフィルムが普及。石油資源への依存を減らし、再生可能資源の利用を促進しています。


②生分解性プラスチックの進化

土壌や水中で自然分解するPLA(ポリ乳酸)やPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)の実用化。耐水性や強度が改善され、カット野菜や宅配資材にも対応可能になっています。


③リユース型包装の普及

繰り返し使える容器やコンテナが物流やイベント分野で活躍しています。ごみ削減とコスト最適化を両立し、循環型経済の構築に貢献しています。


④紙ベース包装の再評価

再生紙や成形パルプを使った包装が増加。リサイクル性に優れるが、耐水性や強度とのバランスがまだまだ課題です。


⑤スマートパッケージ技術の導入

QRコードやプリンテッドエレクトロニクスを埋め込んだ包装で、トレーサビリティやリサイクル支援。消費者が産地情報や環境認証を簡単に確認できる仕組みが導入されています。


他にも、海藻や米澱粉などを使った、食べられるor水に溶ける包装が登場したり、水性インクや堆肥化可能な接着剤で、リサイクル性を向上するなどの工夫もされています。


野菜の梱包資材

昔は地元の八百屋などで新聞紙に包むだけの販売が主流でした。現在はこういった技術を用いて、野菜の包装資材は驚くほど進化しています。野菜を買った後、家での保管にも役立つこれらの包装について、一度目を向けてみてはいかがでしょうか。







 
 
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